アジアゾウ

                                    写真:千葉県 市原ゾウの国
アジアゾウ=長鼻目 ゾウ科 アジアゾウ属
英名:Asian Elephant
学名:Elephas maximus
生息地:インド、スリランカ、タイ、ミャンマー、マレーシア、インドネシア、ブータンなど。
食べ物:草、葉、樹皮、果物、根野菜、穀類など
寿命:約60年(野生) 飼育長寿記録、推定86歳、井之頭公園2013年1月、66歳「はな子」
体長:約2~3.5m 体重2~5t
特徴:鼻が長く、アフリカゾウより耳が小さい、丸みのある背中
生息状況:絶滅危惧IB類
別名:インドゾウ(アジアゾウの亜種でもある)、マカナ(牙のないゾウのこと)
漢字:象

長く大きな究極の鼻


生態
ゾウは大きく分けてアジアゾウとアフリカゾウの2属2種に分類され、地球上の動物ではもっとも大きな陸上動物になる。正確に言えばアジアゾウよりも近縁種であるアフリカゾウの方が若干身体が大きく、アジアゾウはアフリカゾウより耳が小さいことがゾウの中で区別つけやすい特徴になっている。また、その耳はゾウの体温調節をするために、熱を放散する役目をもっている。
そして、ゾウ最大の特徴である長い鼻は大きく分けて5つの機能が備わっている。
①においを嗅ぐ
②呼吸をする。
③音を鳴らす。
④水を飲む。
⑤物をつかむ。(食事などで)
この長い鼻にはおよそ10万もの異なった筋肉があると言われている。そして、アジアゾウの鼻先には小さなものをつかむことのできる指のような機能をする部分があるようだ。
この鼻を器用に使い水浴び(鼻シャワー)をしたり、植物を掘ったり、木の皮を剥いだりもでき、時には戦いで使うこともあるという。

 アジアゾウは主に森林や草原に生息している。朝、夕に行動をしており、日中の日差しが熱い時間は水浴びなど泥浴びをして過ごしている。一日に食べる量は膨大で、およそ136キロの食糧を消費している。ゾウたちはあまり眠りにつかず、巨体を維持するために大量の食糧を求めて長い距離を渡り歩く。だが、近年では生息地の減少により季節的な移動でも30~50㎞に限られているようだ。
ちなみに、ゾウたちは歩きで時速約6㎞、走ると、時速約40㎞にもなる。
ゾウ社会はとても複雑で、メスたちが中心の群れで生活をしている。その群れには最年長のメスがリーダーになり母親とその子どもや若いメスがいる10頭ほどの絆がとても強い家族で形成されている。一方オスは若いオスたちで群れを作って行動しているが、年長のオスは単独で暮らしている。メスが発情すると、オスがメスの群れに加わり交尾を行う。交尾をするのは牙の生えた優位なオスになる。そして、オスには「マスト」と呼ばれる性的に興奮する時期があり、この時期はとても攻撃的になり危険な状態だという。マストになると、コメカミからタール状の液体を出しているので、判断がしやすいらしい。ちなみに、ゾウの牙(象牙)はメスには生えないか生えても唇より先に出てこない。また、ほとんど牙の生えないオスも存在し、このオスのことを「マカナ」と呼ぶ地域もある。

 妊娠期間は哺乳類の中でもっとも長く約22か月にもなる。1回に1頭の子どもを産み、出産時は群れのメスたちが助産婦として胎盤の除去を手伝う行動をするが、無事に出産できても、母親が興奮状態で自分の子どもを襲い傷つけたり、時には殺してしまったりすることもある。
生まれたばかりの子どもは体重約90㎏、体長約90㎝もあり、生まれてすぐに立ち上がることができる。そして、乳離れするまでに2~3年もかかるが、その間、群れの家族に囲まれながら捕食者から守られて大切に育てられる。また、その子どもは親の行動をじっくり観察し、食べ物の取り方、食べ方などを真似したりして練習をくりかえし学んでいく、とても頭の良い動物になる。そして、メスは9年、オスは15年で成人になり、メスはそのままグループにいるが、上記のようにオスは育児期を終えたらグループから離れる。

人間と~
ゾウは2万年前には今よりもっと多くの多種のゾウが存在し、世界中各地に分布していた。その頃、人類はゾウを食用とし、動物壁画にマンモスなどを描き残している。この当時から象牙は彫刻や装飾の対象となり、貴重な存在になっていた。
前1000年ころにはエレファンティネ島、ナイル川流域、インダス川流域に大きな象牙交易地が栄え、ゾウの大量補殺が行われたという。
そして、今から数千年も前から半家畜化として人間に使われてきた動物だった。
また、同時に争いでも使われ、軍用にインドゾウを使役する習慣があり、敵に恐怖心を与える心理的武器としてゾウを用いていたという。
エジプトではアフリカゾウを戦闘に利用し、セレウコス朝シリアのインドゾウ部隊と戦わせたという伝説があり、それによれば、インドゾウ側が勝利したことを通じ、昔の博物誌では現在とは違い、アフリカゾウよりインドゾウのほうが「より巨大でどう猛」を記述をしているようだ。
このように、ゾウは頭もよく力があることから、荷物の運搬、戦争の武器として人間に扱われてきた。現在でも、震災などで、資材や機械を運ぶために使われたという。
また、中国では薬品として、ゾウの骨や肝、皮膚など様々な部分を使っていたという。そして、象牙は笏(しゃく)として使っていた。
日本では、天智天皇10年(671)10月に天皇は袈裟(けさ)、金鉢と一緒に象牙を珍財として法興寺の仏前に献じたという。
このように、象牙は今も昔も非常に高価(位が高い代物)なものとして扱われてきた。

日本にアジアゾウが初渡来したのは応永15年(1408)だという。その後、度々ゾウは渡来し、享保13年(1728)6月7日、長崎にオスメス2頭のゾウが渡来した。これは、当時、徳川吉宗の命によって清の商船がもたらしたものになり、メスが長崎で病死し、オスのみが翌14年5月に無事に吉宗のもとまで届けられた。その途中の4月28日に宮中により、天皇も見物したとされ、この時、ゾウは疲れていたのか膝を折り、天皇に畏敬の意をあらわしたと伝えられている。また、天皇御製の歌も伝わっている。「時しあれば人の国なるけだものも、けふ九重に見るがうれしき」
その後、ゾウは浜御殿に飼われ、吉宗や他の大名の見物として度々江戸城へ連れて行かれたが、飼育に経費がかかることから中野村の源助という農夫に引き渡されたが、翌年21歳で病死したという。その頭骨は安永8年(1779)に中野の宝仙寺に納められたという。

ゾウ伝説
インド神話のシヴァとパールヴァティーの息子ガネーシャはゾウの頭に人体で表されている。
この伝説によると、ガネーシャは人の姿で生まれたが、父親であるシヴァを怒らせ首を切られたという。しかし、シヴァはやがて最初に現れたゾウの首をつけてやったという。
ガネーシャはあらゆる災厄を除く力を持っており、インドでは広く一般に信仰されている神になる。

属名エレファス(Elephas)はゾウを示すギリシャ語。象牙の交易地として古代からその名をとどろかせたスーダンのエレファンティネ島にちなむ。



左写真、金沢動物公園のアジアゾウ



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