シロテテナガザル

写真:横浜市立金沢動物園
シロテナガザル=霊長目 類人猿類 テナガザル科 テナガザル属
英名:LAR GIBBON, SIAMANG,
学名:Hylobates lar
生息地:中国南部、ミャンマー、ラオス、タイ、マレーシア、スマトラ北部
食べ物:昆虫、果実、花や若葉など
寿命:野生約25年、飼育約30~40年 44年生きた記録もあるらしい。
体長:42~59㎝ 体重:4.5~7.5㎏
特徴:顔の皮膚が黒く、顔や手足の周りは白い毛、尾が無く足よりも長い手。
生息状況:絶滅危惧IB類
別名:シアマング、長腕のオラウータン 、猿

美しく鳴く「絆」の声


生態
シロテテナガザルは熱帯雨林の樹上でオスメスとその家族で生活をする。
昼行性になり、胸筋が発達しており、足よりも40%も長い腕があり、腕力と握力がとても強い。手の形も四本の指に親指が向かい合っているので物をしっかりとつかむことができる。樹上生活では枝から枝えとぶら下がりながら振り子のように移動する。これを「ブラキエーション」といい、体をふりこのように揺らすことで運動を維持しエネルギーを節約するという。
腕だけではなく跳躍力にも優れており、ひと跳びで数十メートルも跳ぶことができるらしい。
テナガザルは喉に袋があり、とても優れた声を出すことができる。とくに朝夕の時間帯になると、大きい鳴き声をだし、テリトリーを主張しているという。そして、縄張りに危険が迫った時も大きな声を出して仲間に知らせている。だが、樹上生活なので天敵であるヒョウやゴールデンキャットなどに襲われることはほとんどないらしい。
最近の研究ではテナガザルの声は人間で言うと高度な訓練を受けたソプラノ歌手と同等の声を出すということが解ったようだ。その声は深い森林の中でも約2キロ以上先まで聞こえるという。
これは、テナガザルが長年にわたり見晴らしの悪い密集した森林の中で生活してきたことによって、目で見ることよりも声でコミュニケーションを取る必要性があったことによるらしい。この声を「ソング」というらしく、まさにソプラノ歌手のような声をだす。(ナショナルジオグラフィック参照
テナガザルの鳴き声
そして、オスとメスの間では「デュエット」という声での絆を深めるコミュニケーションをとっている。
デュエットでは、メスが「フーっ」と大きく鳴きはじめ、しだいに声を強めていく、オスはこのメスの声に反応し簡単な震えた声で「フーっ」と鳴くという。テナガザルは生涯一夫一婦性なので夫婦の絆を大切にしている動物になる。

繁殖期は決まっておらず、大体が3月くらいに多いという。妊娠期間は約7~8ヵ月、通常1産1子、生まれたばかりの体重は約300~400gほどで、離乳期間は2年以内と言われている。子どもは母親の腕にしっかりと抱きついている。オスメス共に約8年ほどで性成熟する。天敵に襲われにくい生活をしているシロテナガザルだが、野生での平均寿命は25年ほどになり、飼育での平均寿命よりもかなり低い。野生での寿命が低いのは当たり前だが、開発などによって森林伐採、生息地の分断などによる環境破壊も主な原因となっているかもしれない。
シロテナガザルはテナガザルの中でも動物園で当たり前のように見れる種類だが、絶滅危惧IB類(絶滅の恐れが非常に高い動物)に指定されていることを忘れてはならない。

歴史

テナガザルが本格的に西洋に知られたのは18世紀後半になるという。このころ、テナガザルは長い腕を持つオランウータンと思われたらしく、「長腕のオランウータン」と呼ばれたようだ。
一方、生息地でもある中国では、テナガザルのことを「猨」(エン)または「猿」と呼び深い山奥に住むことから、詩人や哲学者、王侯や貴族の憧憬の的になり、超俗した隠者にもたとえられている。
そして、テナガザルの鳴き声を「猿鳴」や「猿啼」と称し、誌などの文学作品で悲しげななき声の代表的なモチーフとして使われたという。
尚、テナガザルの腕骨で作った笛があり、これを澄んだ良い音が出る逸品と喜ばれた。
日本に来たのは文化6年(1809)に大阪道頓堀で催された。テナガザルは日本に生息していないためか珍獣として扱われたという。

属名ヒロバテス(Hylobates)はギリシア語で<森hule>を<徘徊するものbates>の意からきている。
英名ギボン(gibbon)はインドの方言によるらしい。これはカルディア地方の巨猿の呼び名ケイポン(keipon)を誤用したという説がある。もう一つの英名シアマング(siamang)はマレー原住民のテナガザルに対する呼び名から。
中国名の猨(エン)は援引(ものを引き寄せること)がうまいことによるらしい。ちなみに猿は猨と同字になるようだ。




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